今日はその感想など。
本書の主張は、
第二言語習得過程をIPOM仮説として提案し、その過程をたどる学習法としてシャドーイングはとても有効である。
というもの。
ちなみにIPOM仮説は英語が話せるようになる仕組みであり、以下の4つの習得過程を経るという。
インプット処理(Input processing)
プラクティス(Practice)
アウトプット産出(Output production)
モニタリング(Monitoring)
この習得過程を前提として、シャドーイングは以下のように働くと説明する。
インプット処理(Input processing)
シャドーイングは模倣・再現学習なので音声知覚が習得できる。→リスニング力の向上
プラクティス(Practice)
シャドーイングを繰り返すことによって単語や単語のつながり(チャンク)を自動的に使える段階に持っていくことができる
アウトプット産出(Output production)
覚えた単語や単語のつながりにもとづく流暢なスピーキングが可能になる。(発音や内容面でも向上する)
モニタリング(Monitoring)
耳から聞こえてくる自分のシャドーイング音声を客観的に評価する能力が向上し、これは外国語習得に大きく影響する。
感想
私の経験から、インプット処理とプラクティスという点ではシャドーイングはとてもいい手段だと思っている。短い例文であっても音声とともに声に出すという訓練は頭に残りやすい。文字と音声の一致は言語学習には欠かせないと思う。
一方、アウトプット産出やモニタリングについて、シャドーイングの効果が筆者がいうほど強いとは思えない。紹介されている研究成果も、シャドーイングに直接関連しているのは、発音や流暢さの向上という点だ。この点については私も強く同意する。口に出したことのない英語はそう簡単には「しゃべれない」。
モニタリングはシャドーイングでは難しい気もしている。シャドーイングを続けていると無意識化するときがあって(意識が別に向く、あるいは別のことを考えてしまう)、その時は聞いている内容と自分の発話についてきちんとモニタリングできているとは思えない。
モニタリングに関して言えば、実際に英会話をしているときに、この表現は言いたいこととちょっとずれているなぁと客観視することがあるし、英会話終わったあと、あのように話せばよかったとか振り返りを行うことができる。
以上を考えると、アウトプット産出やモニタリングに関しては、お題について自分で実際に話してみるというのがいいかもしれない。いわゆる独り言だが、それが難しければ、シャドーイングの材料を、自分の言葉のように、そらんじて言えるようにするのも一つだろう。
いずれにせよ、本書によって、英語力を向上させる(第二言語を習得する)メカニズムから、シャドーイングがいかに有効かを理解できておもしろかった。